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戸建て住宅業界の市場動向
2021年の新設住宅着工戸数は前年比5.0%増の856,484戸であり、5年ぶりの増加となったが、2年連続で90万戸を割り込んだ。
新設住宅のうち戸建住宅(持家)は前年比9.4%増の285,575戸であり、前年より増加した。
出所:国土交通省、業界動向サーチ
首都圏を中心としたマンション価格の高騰で戸建て住宅が注目されている。近年、マンションの価格が高騰して戸建て住宅の方が割安と考えられているため、マンションから戸建てに需要が移り始めている傾向がある。
また、コロナ禍における感染予防に対する意識の高まりにより、戸建て住宅への注目が高まっている。
戸建て住宅業界の売上高ランキング(2021‐2022年)
戸建て住宅業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りである。
売上高ランキング | (億円) | |
順位 | 会社名 | 売上高 |
1位 | 大和ハウス工業(1925) | 44,395 |
2位 | 積水ハウス(1928) | 25,895 |
3位 | 飯田グループホールディングス(3291) | 13,869 |
4位 | 住友林業(1911) | 13,859 |
5位 | 旭化成(注1) | 8,333 |
6位 | オープンハウスグループ(3288) | 8,105 |
7位 | 積水化学工業(4204)(注1) | 5,138 |
8位 | 株式会社一条工務店 | 4,428 |
9位 | ミサワホーム株式会社(注2) | 3,993 |
10位 | パナソニックホームズ株式会社 | 2,467 |
出所:各種資料より作成
(注1)旭化成、積水化学工業は住宅事業の売上高である。
(注2)2020年1月、トヨタホームが株式交換によりミサワホームを完全子会社化。トヨタ自動車とパナソニックの合弁会社、プライムライフテクノロジーズ株式会社が全株式を譲り受けた。
戸建て住宅業界のM&A
戸建て住宅業界のM&A(一部)
年度 | 買い手 | 対象企業・事業 |
2020 | ニッケ不動産株式会社
日本毛織(3201)の完全子会社 |
株式会社中田工務店(兵庫県:戸建て・集合住宅等の設計・施工)を子会社化 |
2020 | 株式会社ヤマダホームズ | さくらホーム株式会社(徳島県:注文住宅業)を完全子会社化 |
2020 | 安江工務店(愛知県、未上場) | MIMA(大阪府:注文住宅事業、リフォーム事業)を子会社化 |
2020 | 株式会社吉武工務店(大阪府、未上場) | 株式会社宮匠永田神器(神具・お社・神殿・鳥居の製造)を子会社化 |
2021 | ケイアイスター不動産(3465) | プレスト・ホーム(埼玉県:注文住宅事業、不動産仲介)を完全子会社化 |
2021 | 株式会社GIR
ITbookホールディングス(1447)のグループ会社 |
株式会社三愛ホーム(埼玉県:住宅販売、不動産仲介)を子会社化 |
2021 | ヤマタホールディングス株式会社(鳥取県、未上場) | 有限会社コナン住建(鳥取県:建築資材販売や内外装工事の直接施工)を完全子会社化 |
出所:各種開示資料より作成 |
戸建て住宅業界の今後について
①少子高齢化問題
ハウスメーカーにとっては、今後の少子高齢化問題は避けられない課題である。
新築需要減少への取り組みのみならず、高齢者に向けての医療や介護をどの様に住宅と結びつけていくかが重要である。
②新築住宅以外のビジネスモデルの構築
日本の住宅取引量に占める既存住宅の割合は海外と比べると低く、日本人は新築の住宅を好む傾向にある。その結果、住宅を建ててから、取り壊されるまでの平均年数も諸外国に比べると短い傾向にある。
将来的には、新築需要依存から脱却して、新たなビジネスモデルを作り上げることが戸建て業界の課題になると思われる。
③新たな技術への対応
現在、他業界において活用されているIT・ICT技術を住宅事業に応用することによって、より住みやすい住まいを作る施策が必要である。
具体的には、スマートハウス(注1)やスマートホーム(注2)の導入が期待される。
(注1)IT技術を用いてエネルギーを効率的に使い、省エネルギーを実現させる住宅
(注2)AIやIoTを活用し、安全性や利便性を高め、効率的で快適なライフスタイルの実現を目指す住宅