調剤薬局業界の動向およびM&Aについて【2023年版】

調剤薬局業界の市場動向

2020年度の調剤医療費(電算処理分))、前年度比2.7%減の7兆5,392億円となり、処方箋枚数は7億6,484万枚、前年度から7,800万枚の減少となった(厚生労働省)。

出所:厚生労働省、業界動向サーチ

その内訳は、技術料が同5.0%減の1兆8,779億円、薬剤料が1.8%減の5兆6,058億円、特定保険医療材料料が7.1%増の150億円でした。また、薬剤料のうち後発医薬品は3.4%増の1兆1,337億円でした。
2021から2022年にかけての調剤薬局業界の動向は、コロナ禍の影響はありますが、大手調剤薬局チェーンは前年の処方箋枚の減少から回復傾向にあります。
また、報酬改定によるマイナスの影響はあるものの、前年から新規出店した店舗の売上が業績に寄与しています。
現在、全国に展開されている調剤薬局は、コンビニエンスストアを上回る店舗数となっています(2021年末で約60,000軒)。病院やクリニックの向かいに展開する門前薬局、ドラッグストア併設型、家族経営を中心とした小規模薬局などが存在します。

2020年度は診療報酬改定と改正薬機法が同時に行われ、その目玉のひとつである「オンライン服薬指導」が注目された。
また2019年度3月以降の新型コロナウイルス感染拡大により、オンライン服薬指導のニーズは当初の予測を超えて急速に拡大した。受診控えの長期化による処方箋受付枚数の減少で経営が悪化する企業が多く、その中でオンライン服薬指導体制の整備を行った。
オンライン服薬指導は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、2020年4月より電話や情報通信機器を用いた服薬指導が認められた。

患者が来局せずに薬を入手できるオンライン服薬指導は、外出自粛が長期化する中で処方箋受付枚数の増加が期待できるため、各社は急速に体制整備を進めた。
厚生労働省の最新データでは、調剤医療費は約7兆7,025億円、薬局数は6万171件である。
これに対して、調剤薬局売上高ランキング上位10社の合計売上高は1兆720億円、合計店舗数は4,748店舗であった。上位10社の市場に占める割合は売上高13.9%、店舗数7.9%である。これは、ドラッグストア業界がいずれも6割程度を占めているのと比較すると、低い水準である。

上位10社の市場占有率(売上高)       上位10社の市場占有率(店舗数)

    

調剤薬局業界の売上高ランキング

売上高ランキング(2021-2022年)は、以下の通りである。

売上高ランキング            (億円)
順位 会社名 売上高
1位 アインホールディングス(9627) 2,831
2位 日本調剤(3341) 2,656
3位 クオールホールディングス(3034) 1,531
4位 メディカルシステムネットワーク(4350) 1,014
5位 東邦ホールディングス 918
6位 スズケン(9987) 888
7位 トーカイ(9729) 465
8位 ファーマライズホールディングス(2796) 420
9位 シップスヘルスケアホールディングス(3360) 289
10位 メディカル一光(3353) 227

出所:各種資料より

(注)アインホールディングスはファーマシー事業、日本調剤、東邦ホールディングス、トーカイ、ファーマライズホールディングス、シップヘルスケアホールディングス、メディカル一光は調剤薬局事業、クオールホールディングス、スズケンは保険薬局事業メディカルシステムネットワークは地域薬局ネットワーク事業の売上高である。

調剤薬局業界のM&A

最近の調剤薬局業界のM&A(一部)

年度 買い手 対象企業・事業
2020 寛一商店グループ(未上場) ライフプランニング(新潟県、調剤薬局6店舗運営)を子会社化
2020 ココカラファイン(3098) 有限会社薬宝商事(神奈川県:調剤薬局22店舗運営)を完全子会社化
2020 ココカラファイン(3098) 有限会社寿(大阪府:調剤薬局1店舗運営)を完全子会社化
2020 日本調剤(3341) 連結子会社のメディカルリソースを通して、WORKERS DOCTORS(産業医業務提供事業)を完全子会社化
2020 クオールホールディングス(3034) 茨城県・大阪府の調剤薬局の買収
2021 クオールホールディングス

(3034)

勝原薬局(兵庫県、調剤薬局11店運営)を子会社化
2021 クオールホールディングス

(3034)

ケーアイ調剤薬局(鹿児島、調剤薬局8店舗運営)を子会社化
2022 ウエルシアホールディングス(3141) 株式会社ふく薬品(沖縄県:調剤薬局、ドラッグストア24店舗運営)を子会社化
2022 アインホールディングス(9627) 株式会社ファーマシイHD(広島県、約100店舗の調剤薬局運営)を完全子会社化
2022 クオールホールディングス(3034) 北摂調剤株式会社(兵庫県、8店舗の調剤薬局運営)を子会社化
出所:各種開示資料より作成

今、急増している調剤薬局の譲渡理由とは?

今、急増している薬局譲渡の理由を3点について説明します。
一つ目は、人繰り、人件費の問題です。
従来からの薬剤師不足に加え、新型コロナウイルスの影響で収益が下がっている今、人件費負担も徐々に重くなってきております。
二つ目は、調剤報酬改定、薬価改定による収益低下です。
調剤報酬改定による加算要件の厳格化や、薬価改定による薬価差の縮小など、収益低下が加速する状況はまだまだ続いています。
三つ目は、今後の経営への先行き不安です。
新型コロナウイルス禍で、今後の経営の先行き不安に加え、オンライン対応やかかりつけ薬剤師機能への対応など、今後の経営の先行き不安は年々大きくなっています。
以上3点の理由から、調剤薬局を譲渡することをお考えの経営者の方が今、非常に増えてきております。

新型コロナウイルス禍での調剤薬局業界のM&Aについて

新型コロナウイルス禍での調剤薬局M&Aについてご説明します。
まずコロナ前ですが、コロナ前は、調剤報酬改定、薬価改定による収益の低下傾向は変わらず、買い手企業による案件の選別が徐々に顕著になってきています。
そして、コロナ禍の今ですが、調剤薬業界全体では1割から2割売り上げが低下しています。
現在、徐々に持ち直しつつありますが、小児科、耳鼻科など特定の科目については、まだまだ見通しが不透明です。
買い手企業のM&A案件の検討においては、コロナ後の数字をより重視する傾向になってきています。
そして、コロナ後についてですが、コロナ後はより案件の選別が加速するものと思われます。
そして、コロナの影響が長期化した場合、お相手を見つけることが困難になる恐れもあると思われます。

買手企業の視点と調剤薬局を譲渡するときのポイント

今の調剤薬局業界における買い手企業の視点と、調剤薬局を売るときのポイントについてご説明します。
まず初めに、コロナの影響は無視できないという点です。
買い手企業は、徐々にコロナ後の数字にて安定を見定めるようになってきています。コロナ前の数字も重要ですが、コロナ後の数字についても正確に伝える必要があります。
次に、今回の2022年4月の調剤報酬改定の影響についてです。今回の調剤報酬改定は、全体的にさほど影響はなかったと思われますが、特に買い手企業である大手中堅チェーンにとっては厳しい内容となりました。
自社に影響はなくとも、買い手企業側の心理状況や検討条件については影響が出始めてきています。
そして良い条件を引き出すなら今です。買い手企業の見る目はどんどん厳しくなってきています。外部環境が今より良くなることはありません。
譲渡を少しでも考えでしたら、今この瞬間にでも動き始めた方が良いでしょう。

事例紹介1
薬局の奇跡、調剤薬局の閉局の危機を救ったM&A

首都圏の調剤薬局を経営する会社オーナーから、経営承継支援の代表電話に「早急に薬局を売却したい」とのご相談がありました。

調剤薬局M&Aの担当者が、売却理由をお聞きしたところ、
「(当該薬局の)管理薬剤師が急病のため緊急入院してしまい、薬局の営業を続けられなくなりそうだから。」
とのことでした。

中小調剤薬局の場合、常勤の管理薬剤師と臨時薬剤師数名で勤務時間のシフトを組み、営業対応を行っているケースが多いです。しかし、なんらかの理由で核となる管理薬剤師が勤務できなくなると、臨時薬剤師だけではシフトに穴が開いてしまいます。その結果、処方元の病院(クリニック)は営業しているのに、その門前にある調剤薬局は閉まっているという状態になってしまいます。ご相談いただいたオーナーが薬剤師であれば、管理薬剤師の代わりにシフトに入ることができました。しかし、このオーナーは薬剤師ではなかったため、それも適いませんでした。
「(勤務時間の)シフトに穴が開いてしまうと、処方元のクリニックのドクターに迷惑をかけてしまうし、薬局から患者さんが離れてしまう。」
オーナーの声からは、切羽詰まった様子が感じられました。
代わりとなる管理薬剤師の採用も急ぎ募集したものの、昨今の深刻な薬剤師不足でそれも難しい様子です。
「すぐに薬剤師を派遣してもらえる薬局を紹介してほしい。」
経営承継支援は買い手となる薬局の候補のリストアップを開始しました。

事例紹介2
オーナー1人の薬局譲渡!?買収ニーズ急増の裏に潜む落とし穴

新宿区で調剤薬局を経営する売り手オーナー様は、調剤から事務作業までを全部一人でおこなっていたため、体力的な限界を日々、感じておりました。
住居が近隣ではなく、また病院からの処方箋も1日20枚ほどと少なかったため、このまま廃業するか、誰かに引き継いでもらうか、悩む日々が続いていたそうです。
最近では、このような1店舗を経営している売り手オーナー様からのご相談が増えており、買い手は法人、個人ともに提案できることが、調剤薬局M&Aの特徴と言えます。
調剤薬局M&Aの場合、買い手となる個人は、薬剤師の方であり、比較的スムーズに資金調達ができます。
今回ご紹介する売り手オーナー様も調剤薬局を1店舗経営しており、薬剤師の知り合いから当社「経営承継支援」の存在をお知りになり、霞が関にある当社にお越しいただきました。
売り手オーナー様には、M&Aで必要となる決算書や事業に関する資料を準備していただき、本件スタートしました。

事例紹介3
従業員不在がネックとなり、買い手がみつからない!?

立地は新宿区と人口の多い場所でもあったのですが、やはりオーナー1人であり、他の従業員もいない小さな薬局であることがネックとなり、なかなか引継ぎ先が現れませんでした。
23区内、特に人が多い地区の薬局が欲しい」というニーズをお持ちの都内で複数薬局を展開する経営者様から問い合わせがございました。
今回の新宿区の薬局をご提案したところ、買い手候補である経営者様は、23区内に集中し店舗を拡大ニーズがあり、すぐに興味を示されました。
新宿エリアの施設から新たに処方箋が取得できる情報を持っており、かつ、在宅・訪問薬剤師の拡大も図っていたため、1人オーナー薬局は新宿の拠点としてシナジーがあるとのことでした。
ご相談いただいてからちょうど半年後、1人オーナー薬局は無事、営業権も評価された金額で譲渡が完了しました。

2023年も変わらず調剤薬局M&Aが人気の理由とは

日本各地で大手薬局チェーンの店舗数が増えるなか、2023年にはいっても、調剤薬局業界におけるM&Aニーズは続いています。
マクロ的な市場を状況をみても、国の医療費削減政策に基づく、薬価差益縮小により収益減少に悩む調剤薬局も少なくありません。
2022年12月現在、新型コロナウイルスの影響により、倒産・廃業になる前に、事業継続の方法を模索している調剤薬局も増えてきております。
また、薬学部が6年制へと変わり業界全体が人材不足の傾向のため、知名度がない薬局では後継者不足、人材不足が深刻な問題になっています。

調剤薬局業界の今後について

調剤報酬額の改定
2年に1回調剤報酬改定が行われ、調剤基本料や技術料など調剤薬局に対する報酬は徐々に減らされている。これにより、調剤薬局の経営状況が苦しくなっている。
その結果、経営継続が難しい不採算薬局を閉めたり、M&A(売却)する経営者が増えている。

薬剤師不足、薬剤師の偏在
調剤薬局業界は、慢性的に薬剤師不足の状況に置かれている。大手薬局チェーンの新卒大量採用、調剤併設ドラッグストアの台頭により、多くの中小調剤薬局は薬剤師の確保に苦戦している。
東京・大阪などの大都市圏は多数の薬学部・薬科大学があり、卒業生の薬剤師が多く、薬剤師の確保は可能である。しかし、地方、特に薬科大学の無い地域においては薬剤師の確保は難しくなっている。

調剤薬局の後継者不足
現在の調剤薬局は医薬分業により、過去30年の間に開設された店舗が多く、調剤薬局の経営者が60代以上となるなど高齢化が大きな問題となっています。
個人経営の場合、ご子息が薬局を引き継がない、あるいは親族内に経営を引き継ぐ者がいないなどの理由により、会社を売る、または薬局を閉めるなどの決断を迫られている経営者が数多くいます。

<調剤薬局業界M&Aチームのご紹介>

当社の調剤薬局専門チームをご紹介します。当社チームの特徴は3点あります。

一つ目は、豊富な成約実績とプロフェッショナルによるM&Aサポートを提供できる点です。
M&Aの専門性と調剤業界に特化した専門性を兼ね備えた実績豊富なコンサルタントが、皆様にきめ細かなサービスを提供します。
成約したお客様からは、大変ご満足をいただけております。

二つ目は、完全成功報酬の手数料体系を採用している点です。
当社では、1社でも1店舗でも多くの中小企業、調剤薬局の価値を伝えられるよう、リーズナブルな手数料体系を採用しております。
着手金、月額報酬は不要の成功報酬のみの完全成功報酬制を採用しております。

三つ目は、規模の大小を問わず、専門性の高いサービスを提供できる点です。
当社では、個人薬剤師の方の独立開業案件から、売上数十億円規模の大型案件まで、規模の大小問わず豊富な成約実績がございます。
規模の大小を問わず、専門性の高いサービスを提供できる点が当社の強みであり、毎月、全国の調剤薬局から調剤薬局の価値シミュレーション(無料)をご利用いただいております。

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