不動産仲介業界の動向およびM&Aについて【2023年版】

新型コロナウイルス感染拡大の不動産業界への影響

 新型コロナウイルス感染拡大は、不動産業界に大きな影響を与えている。不動産会社の経営において、特に影響が大きいのは、「来店数の減少」「内見数の減少」「問い合わせの減少」「売上の減少」である。
また、「営業時間の短縮」や「イベントの中止・延期」「物件引き渡しの延期」「テレワークの導入」など業務の進め方においても大きな影響がある。不動産業界への影響を業態別に見ると、賃貸物件の仲介、賃貸物件の管理、売買の仲介、マンション分譲といった広範な業態で大きな影響がある。

不動産仲介業の近年の動向

人口の減少・大都市集中による需要低下と地域差の拡大
少子高齢化の進展により、65歳以上の高齢者の割合が増える一方で生産年齢人口(15歳~64歳)の割合は減り続け、2010年代から日本の総人口は減少に転じている。
不動産仲介取引は生産年齢人口に属する人々が主な顧客であり、ライフステージの変化(独立・結婚・家族増加など)に伴って発生することが多いため、生産年齢人口の減少は不動産仲介業にとってマイナスの影響がある。
地方では少子高齢化に加えて人口流出・過疎化の傾向があり、不動産ニーズの低下が懸念される。一方、大都市圏では人口集中が続いており、少子化の影響は限定的であるが、大手不動産業者による寡占や異業種大企業の参入が進んでおり、競争激化による収益性低下が問題となる。

 コロナ禍による業績悪化
2020年に始まったコロナ禍の影響により、不動産業者の業績は悪化した。
東京商工リサーチのアンケート調査によると、第1回緊急事態宣言下の2020年5月には89.2%の不動産業者が前年同月に比べて減収となり、2021年3月にも71.0%がコロナ禍前の2019年3月に比べて減収という状況であり、業績回復が遅れています。今後、コロナ禍が長引いた場合には廃業を検討する可能性があると回答した企業の割合は2021年4月時点で7.6%となっており、全産業平均(6.8%)を上回っている。

 不動産仲介業者の特徴

宅地建物取引業者の数は2020年末時点で127,215業者であり、全国のコンビニエンスストア数(同時点で55,924)の2倍以上になる。全宅連不動産総合研究所の調査によると、宅地建物取引業(不動産仲介業・不動産販売業)においてパート・アルバイトを除く従業者が3 名以内の小規模事業者が80%超を占めており、37.4%の事業者は従業者1名のみで事業を営んでいることが分かる。一方、従業者が50名を超える事業者は0.1%である。

 出所:令和2年度中小不動産業者のあり方に関する調査研究報告書

(全国宅地建物取引業協会連合会より作成)

不動産売買仲介実績ランキング

2021年の不動産売買仲介実績ランキング(1位~10位)は、以下の通りである。

売上高ランキング            (億円)
順位 会社名 手数料
1位 三井不動産リアリティ 767
2位 住友不動産販売 623
3位 東急リバブル 578
4位 野村の仲介 347
5位 三井住友トラスト不動産 174
6位 みずほ不動産販売 151
7位 三菱UFJ不動産販売 147
8位 オープンハウス 133
9位 積水ハウス不動産 111
10位 東宝ハウスグループ 104

出所:開示資料などより作成

不動産仲介業のM&A

最近の不動産仲介業のM&A(一部)

年度 買い手 対象企業・事業
2019 ハウスドゥ 小山建設グループ3社(建設、不動産仲介)を完全子会社化
2020 ハウスコム 宅都(不動産仲介・売買・賃貸)を子会社化
2020 AVANTIA ドリームホームグループ(戸建住宅の施工・販売、不動産仲介)を子会社化
2020 ハウスパートナーホールディングス サカエ不動産とアールシー(不動産仲介・管理・修繕)の両社を完全子会社化
2020 APAMAN マイハウス(不動産仲介、賃貸物件の管理)を完全子会社化
出所:各種開示資料より作成

今後の不動産業界の課題について

人口減少と高齢化社会
総人口は、2008年をピークに減少傾向である。これに対して65歳以上、75歳以上が全体に占める割合は平成元年から毎年上昇しており、平成30年には全人口の約42%を占めている。
今後、総人口の減少と高齢化はますます進むと予測され、2035年には2005年の人口から1,700万人近く減少すると予測されている。
人口減少は、人々の住環境に関わる不動産業に多大な影響を及ぼす。特に大都市圏と地方では人口の二極化が進んでおり、特に地方では  空家の増加や新築物件への需要が減ると思われる。

出所:総務省統計局「国勢調査」「人口推計」

2022年問題
農業以外の利用制限による税制優遇の対象となる生産緑地が、30年の期限を2022年に迎える。これによって、2022年以降は税制の優遇  がなくなり、所有者の多くが生産緑地を宅地に転用して売りに出すと予測される。
その結果、市場は土地の供給過多状態となり、地価の下落が危惧されている(2022年問題)。
生産緑地の80%は首都圏、近畿圏、中京圏であり、不動産市場への影響は非常に大きいと思われる。

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