【2021年】どうなる!?スポーツ用品製造業界M&A

【2021年】どうなる!?スポーツ用品製造業界M&A

近年、スポーツ用品製造業界のM&Aが増えています。

ここでは、スポーツ用品製造業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。

これらから、スポーツ用品製造業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。

 

I     M&Aの多いスポーツ用品製造業界の現状

スポーツ用品製造業界の全体像を理解するために、市場動向や経営環境、ビジネスモデル、M&Aの買い手候補となる同業他社について説明します。

 

【1】スポーツ用品製造業界の市場動向・経営環境

スポーツ用品製造業は、運動用品を製造する事業者のことをいいます。

スポーツ用品製造業の市場規模は、経済産業省「工業統計表・産業別統計表(平成29年)」によりますと、2012年の2,493億円から2016年の2,783億円へと増加しています。

これは、フィットネス・クラブ、シューズ、スポーツ用自転車の人気が高まったことに起因しています。

逆に、ゴルフ、スキーは減少しています。

 

【2】 スポーツ用品製造業界のビジネスモデル

スポーツ用品製造業のビジネスモデルは、スポーツ用品を製造し、卸売業者に販売するというものです。

近年は小売店の大型化が進み、卸売業者を通さずに小売店へ直接販売するケースが増えてきました。

多品種少量生産が特徴です。

近年は、生産コストの低減を図るため、ほとんどの大手企業は、東南アジアや中国へ工場を移転しました。

 

【3】 スポーツ用品製造業界M&Aで買い手候補となる企業

スポーツ用品製造業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業や大企業が中心になると考えられます。この業界では、以下のような大企業が中心となって業界再編を進めていくことが想定されます。

シマノ、アシックス、デサント、ゴールドウィン、ヨネックス、グローブライド、ミズノ、遠藤製作所です。

 

II  スポーツ用品製造業界M&Aで売却する売り手のメリット

安定している大手企業にM&Aでスポーツ用品製造業を承継することで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。また、得意先である卸売業者、協力工場などの仕入先との関係を継続することができます。

また、小規模事業者が単独では難しかった設備投資によって、スポーツ用品製造業の経営効率化を実現することができます。

結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。

さらに、買い手企業が大企業であれば、工場の生産規模の拡大による生産性向上、大量仕入れによる原材料費の引下げや、人材採用コスト、広告宣伝費、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。

以上のようなシナジー効果が期待され、買い手候補にとって魅力的な事業であれば、売り手側の経営者は、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。

 

III   スポーツ用品製造業界M&Aで買収する買い手の注意点

スポーツ用品製造業界で買収を行う際、デュー・ディリジェンスにて調査すべき経営資源や注意点を説明します。

 

【1】スポーツ用品製造業の買収デュー・ディリジェンスにおける注意点

スポーツ用品製造業は、不良品の発生率が高いこと、売れ残りが多く発生すること、季節替わりによる商品入れ替えが必要であることから、返品率が高いと言われています。

返品されたもので、陳腐化した在庫が無いか確かめることが必要です。

また、自社工場を海外で所有する場合、生産設備の利用が適切に行われているか、労務管理は適切であるか、コンプライアンスは遵守されているか、調査しなければいけません。

 

【2】スポーツ用品製造業の買収で承継すべき経営資源

スポーツ用品製造業では、海外の生産拠点が基本となる経営資源です。

自社工場であれば適法に所有権を移転しなければいけません。また、協力工場との契約があれば、その契約関係を承継しなければいけません。

そして、デザイン面での商品開発を継続的に行うことができる人材は、重要な人的資源です。

新商品の開発に必要となる人材が流出しないように注意しましょう。

無形資源は、事業承継によって喪失されることが多いため、スポーツ用品製造業のM&Aを行う場合は、従業員の引継ぎに時間と労力をかけるなど、無形資産の承継を丁寧に行うことが重要でしょう。

 

IV スポーツ用品製造業を買収するときの企業価値評価(株価算定)

スポーツ用品製造業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用することができる財務数値は、以下の通りとなっています。

 

【1】 スポーツ用品製造業の評価で使う資本コストとマルチプル

まず、TKC経営指標(2018年度)によれば、スポーツ用品製造業の収益性について、売上高成長率は約0.4%です。また、粗利率は33.1%、営業利益率は2.5%となっています。生産性について、1人当たり売上高は1,322万円、1人当たり人件費は420万円となっています。

次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、スポーツ用品製造業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は1.0~3.0倍、PER倍率は25~40倍、EBITDA/企業価値倍率は15~25倍となっています。

さらに、筆者が推計するスポーツ用品製造業の株主資本コストは、安定した老舗企業であれば8%、急成長の新興企業であれば13%が妥当であると考えます。これは、この類似上場企業のROICが4~5%であることを考慮しつつ、類似上場企業のベータ値が0.7~1.2であること、ヒストリカル・マーケット・リスク・プレミアム(1950年代~2020年)が7%~9%であることを前提にして、小規模リスク・プレミアムを加算して推計しています。

 

【2】 スポーツ用品製造業の類似上場企業比較法で採用すべき企業の例

スポーツ用品製造業を評価する類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、グローブライド(7990)、シマノ(7309)、アシックス(7936)、デサント(8114)、ゴールドウィン(8111)、ヨネックス(7906)、グローブライド(7990)、ミズノ(8022)が挙げられます。

 

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執筆
村上 章

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