2021年、どうなる!?インターネット広告業界M&A

2021年、どうなる!?インターネット広告業界M&A

近年、インターネット広告業界のM&Aが増えています。ここでは、インターネット広告業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。

これらから、インターネット広告業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。

 

I M&Aの多いインターネット広告業界

インターネット広告業界の全体像を理解するために、市場動向や経営環境、ビジネスモデル、M&A可能性のある競合他社を説明します。

【1】   インターネット広告業界の動向・市場環境

インターネット広告業は、インターネットのメディアから広告スペース(広告枠)を仕入れ、それを広告宣伝したい企業へ販売する事業者のことをいいます。

インターネット広告には、画像だけの広告、文字だけの広告もありますが、動画を使った広告も増えてきています。

広告市場のなかでも、インターネット広告の市場規模は急拡大が続いています。インターネットを利用する機器が、パソコンからスマホなどのモバイルに以降しているため、モバイル向け広告が中心となってきています。

インターネット広告費用の市場規模は、2010年の7,700億円から、2018年の1兆7,500億円へ2倍以上の増加を見せています。

 

【2】 インターネット広告業界のビジネスモデル

インターネット広告業のビジネスモデルは、以下の3つです。

第一に、自らのウェブサイト(メディア)に他社の広告を掲載することで広告料収入を得るものです。メディアにも種類があり、Yahoo!に代表されるポータルサイト、YouTubeなどの動画サイト、NAVERまとめのようなキュレーションサイト、Facebookのようなソーシャルネットワーキングサービス(SNS)です。

第二に、従来型の広告代理業です。従来はテレビや新聞などの広告が中心でしたが、近年はインターネットのウェブサイト上の広告が中心となってきています。インターネット広告のみを扱う専門の広告代理店が登場しています。

第三に、広告の掲載を仲介するメディアレップです。メディアの広告枠を集めてきて、広告代理店に販売するビジネスを行っています。

 

【3】 インターネット広告業界M&Aで買い手候補となる企業

インターネット広告業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業や大企業が中心になると考えられます。この業界では、以下のような企業が中心となって業界再編を進めていくことが想定されます。

サイバーエージェント、オプトホールディングス、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム、サイバー・コミュニケーションズ、アドウェイズ、セプテーニ・ホールディングスです。

 

II  インターネット広告業界M&Aで売却する売り手のメリット

安定している大手企業にM&Aでインターネット広告業を承継することで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。また、顧客である企業は、これまで利用してきたメディアへ継続して広告を出すこともできます。また、広告代理店が広告枠を仕入れるメディアなどの仕入先との関係を継続することができます。

また、小規模事業者が単独では難しかったIT投資によるデジタル化の推進よって、インターネット広告業の経営効率化を実現することができます。結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。

さらに、買い手企業が大企業であれば、人材採用コスト、広告宣伝費、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。

以上のようなシナジー効果が期待され、買い手候補にとって魅力的な事業であれば、売り手側の経営者は、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。

 

III    インターネット広告業界M&Aで買収する買い手の注意点

インターネット広告業界で買収を行う際、デュー・ディリジェンスにて調査すべき経営資源や注意点を説明します。

 

【1】 インターネット広告業の買収デュー・ディリジェンスにおける注意点

インターネット広告業の事業性を評価する場合の注意点として、広告を出すメディアのページビューすなわちウェブサイトの利用者・購読者の数と今後の予測が重要です。

また、従業員の能力の評価も重要です。営業マンについては、新技術へ対応できるか、顧客への対応や提案内容は適切か確かめておく必要があります。開発スタッフについては、ソフトウェアの開発力、作業のスピードを評価する必要があるでしょう。

また、多数の個人情報を保管することになるため、情報セキュリティ、個人情報保護法対策が行われているか確かめることは不可欠です。

 

【2】 インターネット広告業の買収で承継すべき経営資源

メディアの場合、ページビューすなわちウェブサイトの利用者・購読者の数が基本となる経営資源です。また、代理店の場合、販売できるメディアの枠をどれくらい持っているか、それぞれのメディアのページビューが経営資源となります。

代理店の場合、営業マンのマーケティングやソリューションの提案力が重要です。企画力・提案力などが求められます。

また、顧客である広告主との関係性、リピートされる信頼関係が承継すべき経営資源となります。

無形資源は、事業承継によって喪失されることが多いため、インターネット広告業のM&Aを行う場合は、顧客関係の引継ぎに時間と労力をかけるなど、無形資産の承継を丁寧に行うことが重要でしょう。

 

【3】 インターネット広告業を買収するときの企業価値評価(株価算定)

インターネット広告業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用することができる数値は、以下の通りとなっています。

まず、上場企業の有価証券報告書によれば、インターネット広告業の収益性について、売上高営業利益率は2%~7%となっています。生産性について、1人当たり売上高は700万円となっています。

次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、インターネット広告業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は3~5倍、PER倍率は15~40倍、EBITDA/企業価値倍率は6~15倍となっています。

さらに、筆者が推計する株主資本コストは、安定した老舗企業であれば5%、急成長の新興企業であれば10%が妥当であると考えます。これは、この類似上場企業のROICが5~20%であることを考慮しつつ、類似上場企業のベータ値が0.5~0.8であること、ヒストリカル・マーケット・リスク・プレミアム(1950年代~2020年)が7%~9%であることを前提にして、小規模リスク・プレミアムを加算して推計しています。

なお、類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、サイバーエージェント(4751)、メンバーズ(2130)、GMOインターネット(9449)、GMOアドパートナーズ(4784)、アドウェイズ(2489)、フルスピード(2159)、ブランディングテクノロジー(7067)、デジタルホールディングス(2389)、イーエムネットジャパン(7036)、セプテーニ・ホールディングス(4293)、アジャイルメディア・ネットワーク(6573)が挙げられます。

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執筆
村上 章

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